”破壊が無ければ再生は無い 生命の循環の永遠の形 真実の種から産まれた木”

MorningParkには大きな樹が生えていて、世界中の色とりどりの美しい花が咲き、あらゆる果物の実がなります。

このMorningParkの樹は、表現をするための掲示板です。どんな言葉でも、詩や小説、散文、イラストや音楽でもかまいません。あなたの思いを、届けてみませんか。
それはこの木を育む栄養になって、実をつけ、花を咲かせ、ここを訪れた旅人を癒します。

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獣王ゴードン(草稿)Ver1.01 えん 11/12/4(日) 6:17

獣王ゴードン(草稿)Ver1.01
 えん E-MAILWEB  - 11/12/4(日) 6:17 -
獣王ゴードン(草稿)Ver1.01

 ゴードンは王国の西の砦の警護を任されていた。
 時は聖王ジャスティンの治世。魔王セロとの争いは熾烈を極め、両国は互いに疲弊し、戦火は膠着状態にあった。
 砦の向こうには魔王の統治下にある死の国ネリューデがあり、そこに住む死に神たちがもし大挙して押し寄せ砦が破られれば、魔王軍の勝利は決したのも同じことであった。
 にもかかわらず、彼はただ一人で、この砦の警護を任されていた。
 西の砦は砂と岩の荒野の真ん中にある。見渡す限り何もないその砦の屋上で、ゴードンはポケットから煙草を取り出し、じっと見つめた。
「今日ぐらいやめとくかねぇ……。」
そういうと彼は煙草をもう一度ポケットに仕舞い直す。
 階段を下り、壊れかけたテープレコーダーから、古いジャズをかけると、彼は一通り筋トレをし、熱いコーヒーを入れ、読書を始める。
(何の為に俺は、努力しているのか。勝ち負けになんて何の興味もねぇのに。)
彼はその時窓越しに荒野を見つめ、死に神や悪魔たちが群を成してこちらへ向かって来るのを見た。
「おでましか。」
彼は木のテーブルにグラスを置き、地下の倉からワインを持ってくると、ボトルを空け、そのグラスに注ぐ。
 そのワインの色は真っ黒であった。まるで汚れた血の色みたいに。彼はそれをぐいっと飲み干すと、一人ごちた。
「今日ぐらい、ゆっくりさせてくれないもんかね。」
独り言が増えた。彼は思いながら、口元の黒いワインを拭う。
 彼には愛する人がいた。けれど、彼は彼女に愛されることはなかったし、身分の違いもあって添い遂げることは出来なかった。その日に、彼は「挺身」を申し出た。挺身とは、この黒いワインを飲むことを意味した。
 それは、特別な薬で、コーネリア王国の科学部が偶然発見したものだ。魔王との決着を急ぐ聖王ジャスティンの命により、それはたいした検証も行われずに、実戦に用いられることとなった。
 この薬は、遺伝子に変化を起こさせる。この薬を使用したものの半分は、その薬の副作用に耐えられず肉塊となり、もう半分は発狂し、異形の獣となる。そして、さらにその残りの半数だけが、意思を持ったまま、半身半妖となり「人ならざる力」を持つのだ。
 その中でもゴードンは最強の獣へと変化し、王を喜ばせた。

 彼は咆哮を上げる。砂漠の真ん中で。
 彼の体は変化していく。
 巨大な鷹の翼、頭は獅子、尾は蛇のそれに。
 それは伝説の獣にちなみ、獣王キマイラと呼ばれた。
 彼はディナーのように、敵の肉を食らい、血を飲み、雄叫びを上げる。それは彼が唯一生きていると感じられる瞬間だった。
 今もコーネリアのどこかで生きているであろう大切な人の為に、自分が出来ることは、この砦を守り続けること。それだけだった。それ以外に、この命に意味は無かった。
 いつも、砂と岩だらけの荒野が世界の全てで、モンスターだけが仲間だった。同じ化け物のような姿をして、無意味な争いを楽しむ、同じ気持ちを共有する唯一の友。
 殺し合うことが、生きることだった。

 ゴードンは夜空を見上げる。
(幸せにしているか……。)
人としての記憶が薄れることはあっても、彼はその人の誕生日を忘れることだけは決してなかった。

引用なし

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